ウナギを食べるという文化(3)
「吉田でウナギを扱う意味」
私は仕事柄、いろんな業種の人と話をするのですが、私が「吉田でウナギの仕事をしています」と言うと、「ああ、吉田のウナギは有名だからね」とよく言われます。中には「ウナギはやっぱ吉田に限るね」なんて言ってくれる人もいます。しかし残念ながら、私のところでは吉田産のウナギをほとんど扱っていません。理由は単純。流通量が絶対的に少ないからです。昔のようにたくさんの養殖池が稼働していればいいのですが、今はやっぱり台湾産や中国産が多く、これが全体の7割。残り3割が浜名湖や三河産といった感じでしょうか。ついでに言ってしまえば、私のところは県内のお客さん(出荷先)もほとんどいません。つまり、輸入商社が仕入れた台湾産・中国産のウナギを活きたまま吉田町まで運んできて、再び活きたまま他県の専門店さんに販売しているというわけです(もちろん、その場合はちゃんと「台湾産」「中国産」として売ってますから変な誤解は無用ですよ)。しかし、これを他人に話すと「じゃあ、吉田でやってる意味あるの?」ってことになる。意味と言われるとちょっと困ってしまいますが、吉田で仕事をしていて都合のよいことはあります。そのひとつが水。「ウナギづくりは水づくり」という言葉がありますが、ウナギを育てるのには良い水が必要となります。かつて吉田地区の養鰻が栄えたのも、大井川の良質な伏流水があったから。また、池揚げされたウナギを活かしておくにも良い水が必要となります。みなさんはウナギの立て場というものをご覧になったことがありますでしょうか。ウナギを扱う業者の倉庫には、たいてい天井から水を落とす水栓がいくつも設置されていて、その下にウナギの入った桶が何段にも塔のように重ねられています。桶には小さな穴が開いていまして、いちばん上の桶に落ちた水がだんだんと下の桶まで行き渡るという仕組みになっている。こういった設備を立て場と呼ぶのですが、私の仕事場にも小さな立て場があり、常時天井からは大井川の伏流水(地下水)が流れ落ちています。「こりゃあ、マイナスイオンが大量に出ていいね」と言った人もいました。さて、活きたウナギというのは密閉されたビニール袋に入れられて輸送されてくるのですが、さすがにウナギもストレスが溜まるようで、到着したころにはぐったりと弱っています。そこで、立て場でいちど桶にあけて数日間新鮮な水にさらしてやり、再び元気を取り戻させるわけです。さらに水が良いとウナギの臭いも少なくなる。そう考えると、水が良い吉田町でウナギを扱う利点というのが見えてきます。
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