ちょっとだけズレてる(2)

 私は焼津市に育ち、焼津の幼稚園、焼津の小学校に通いましたが、中学は地元から離れた静岡市の学校に通いました。焼津と静岡ですから距離も近いし、大した違いもないように思われるかもしれませんが、当時の私にはけっこうなカルチャーショックがありました。まず、静岡はビルもたくさん建っていて都会だなあ、と思いました。実際、同級生からは「焼津って田舎だよな」とか「やっぱり親は漁師?」とか「電車でトンネル越えると魚臭いよな」と軽いイジメを受けました。ちなみに親は漁師ではありませんし、魚臭くなるのは瀬戸川を越えるあたりからです。
 そしてよく言われたのが「方言を使うな」でした。たとえば私が「三ヶ日って愛知県だら」なんて言うと、すぐに「だらって言うなよ」とチェックが入りました(注:三ヶ日は静岡県です)。おかげで中学を卒業するころには「〜だら」や「〜だかしん」とか「あんてーら・こんてーら」といった志太っぽい言葉を使うことはなくなりました。その後、藤枝の高校に進学して「この人たちはなんて言葉が汚いんだ」と同級生に対し愕然とするわけですが。
 興味深いのは、静岡市の人は自分が標準語を話していると勘違いして、いっちょまえに焼津市民をバカにするところです。私も中学を卒業したころにはそんな感じでした。ところが高校を卒業して東京に出たとき、再びショックを受けることとなります。「えっ、定規のこと線引きって言わない?」「服のアクセントはフじゃないの?」「ギュウギュウのあとにはパンパンってつけるよね?」といった感じで。それからずいぶん後の話ですが、東京の出版社にいたころ、私の原稿を読んだ編集長に「鈴木君、これ方言だから直して」と注意されたことがあります。何年も東京に暮らしていたのにこれです。それくらい静岡の人というのは自分たちのズレに気付いていないんですね。
 
 
Home > Works > ちょっとだけズレてる [1][2][3][4][5][6]